入園希望者

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    毎年、今くらいの時期になると入園希望者がやって来る。



    カルガモだ。



    池のほとりにあるスズメ休憩所で給食を実施していると、ヨチヨチ歩きで近寄ってきて、物欲しそうに僕のことを見上げる。



    最近は、スズメ休憩所が薄汚いコジキに不法占拠されているから、スズメ休憩所のまわりのベンチなどで給食を実施しているが、やはり子ガモたちが近寄ってくる。



    近寄ってくるのは子ガモで、毎年僕を見ている親ガモは、池のほとりでグァーッと短く鳴いて子ガモに注意を促す。でも、よっぽどお腹が空いているのか僕の足元までやって来る。



    子ガモと言っても、体の大きさは大人と変わらない。ただ、鳴き声はヒナのままで、ピィ〜という情けない声だ。



    去年の子ガモは、僕の足元までやって来ると、僕を見上げながらしきりにピィ〜と鳴く子がいた。



    「おじちゃん、あたちもマンマほし〜ポロリ



    そう言っているようだ。でも、こんな図体の大きな鳥が相手では、僕の持っているスズメパンなど瞬時になくなってしまう。



    …おめーらはお母さんからもらってろ!



    そう諭すのだが、コイツらは日本に住んでいるくせに、スズメ同様日本語が苦手だ。さらにピィ〜と催促鳴きをする。



    「おじちゃん、マンマほし〜ポロリ



    …お母さんからもらえっつーの!オレはスズメ専門なの!



    「おじちゃん、マンマ〜ポロリ



    つぶらな瞳で僕を見上げながら、情けない声で鳴かれるとやはり気の毒になる。



    …しょうがねーなぁ。じゃ、1個だけだぞ。



    そう言いながら、カルガモが食べるにはあまりに小さなスズメパンを子ガモの前に投げてやった。



    次の瞬間、池のほとりで遊んでいた他の子ガモたちがいっせいに僕をめがけて殺到し、あっという間に子ガモ軍団に取り囲まれた。



    スズメパンを食べていたスズメどもは、ビックリして全員が飛び立って木の枝の上に避難した。僕を取り囲んだ子ガモ軍団は、口々にピィ〜。



    「おじちゃん、ボクもほし〜!」



    「あたちもほし〜!」



    冗談ではない。これだけのカルガモに食べさせるだけのスズメパンは持っていない。やむなく、木の上のスズメどもに「全員移動!」と声をかけ、自転車に飛び乗って脱出した。



    普段は僕に対して横暴きわまりないスズメどもは、こういう時だけは実に従順で、全員が僕の後を追いかけて飛んできた。



    去年のこの件があるので、今年は子ガモたちが近寄ってくると、



    …おめーらにやってんじゃねーんだ、こんにゃろう!



    と言いながら、子ガモたちを池の方へ追い立てる。子ガモたちは、クチバシを半開きにしながら、必死で走って逃げる。池の中にダイビングする子もいる。



    しかし、追っ払ってもまた近寄ってくる。そのたびに、池の方へ追い立てる。その合間を縫ってスズメどもにスズメパンを与えなければならないから、朝っぱらから忙しいことこの上ない。



    ゴキブリカラスやコジキハトのように、暴力的に追っ払えば近寄って来なくなるだろうが、カルガモはゴキブリカラスのような害鳥ではないから、投石やレーザー攻撃まではできない。



    それに、コジキハトやゴキブリカラスと違って見た目もユーモラスだし、特に子ガモの仕草やつぶらな瞳はやはり愛らしい。空腹で近寄ってくるのなら本当はエサをあげたいのだが、一度あげたらキリがなくなるから、仕方なく追い立てている。



    カルガモは、他のカモのように渡りをしない。特に、都会のカルガモはスズメと同じく人間に密着して生活するシナントロープだ。



    カルガモもスズメも、ゴキブリカラスやコジキハトのように100%人間の食べ物に依存しているのではない。自然のエサがあれば、人間の食べ物には見向きもしない。



    都会には野良猫やゴキブリカラスのような天敵も多いし、子ガモが側溝に転落したり、交通事故に遭う危険性もある。それでも、人間からもらえるエサをアテにして、カルガモは自然のエサが少ない都会で暮らしている。



    この子たちが育ち盛りの夏の頃には、僕の近くに来ることはない。近寄ってくるのは、必ず今くらいの時期だ。



    夏の間は、カルガモにエサをやる人が多い。スズメ休憩所の近くのベンチには、毎朝エサを与えにくるネクラそうな男がいたが、朝晩急に冷え込むようになると、パッタリ来なくなった。



    エサをくれる人が少なくなったため、お腹を減らした子ガモたちは仕方なく僕のところにやって来るのだ。



    勝手なものだ。気候のいい時だけ気まぐれにカモにエサをやり、寒くなってエサが乏しくなった頃にエサやりをやめてしまう。こんなことをするから、野鳥にエサをあげるのはやめましょうなどという無知な看板やポスターが増えるのだ。



    ペットも野生動物も、人間が関与するのなら最後まで責任を持つべきだ。それができないのから、彼らが自力で生きてゆける環境を今すぐ取り戻すしかない。

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